量子力学的 分子動力学による物質の研究

 分子、固体結晶やソフトマターについて、原子サイズ(1億分の1cm程度)
のミクロな構造やそれに伴う機能との因果関係を探るため、量子力学を
ベースに原子内部の電子状態を記述する方程式を用いる、計算機シミュ
レーションを行っています。この方法では、
原子と電子のレベルまで
おりて研究するので、
第一原理 (ab initio) 分子動力学法 (First
Principle Molecular Dynamics) と呼ばれています。

  我々はこの第一原理分子動力学法を、物質の
基本構造や変形、
分子反応 、プラズマと接する
物質内での原子移動 などの研究に応用すること
を念頭に、コード整備を進めています
(善甫康成氏との共同研究)。とくに後者の研究
では、一般に輸送係数などを仮定したマクロな
モデルが使われていますが、第一原理分子動力
学を用いればこれらの仮定を排してミクロな
視点からの研究が可能となります。

  左図は、グラファイト表面に水素原子が
吸着され、炭素分子間の結合を切り
炭化水素
分子を生成
し逃げていく様子を調べた第一
原理分子動力学シミュレーション結果の一例
です。

右図: グラファイト表面で生成された炭化
水素分子、上からCH, CH2, CH3, CH4分子。


 
少し詳しくなりますが、電子の分布を量子
力学で記述するシュレディンガー方程式は数値
的に正確に解けるのはほぼ5電子程度までです。
ところが、実際の物質は極めて多くの原子(と
電子)で構成されており、それらをモデル化し
ても同じ方法で扱うことは事実上不可能です。
ところが、個々の電子を表す波動関数の代わり
に電子密度に着目すると解くべき方程式はかな
り簡単になります (コーン・シャム方程式)。
 この場合、すべてのミクロ量が電子密度に
よって表されるので、この手法は
密度汎関数法
分子動力学(DFT)と呼ばれ、化学反応や原子
レベルでの物質の研究に広く使われています。


 また、最近では基底状態に限らず、励起状態を扱ったり、外部
電磁場に対する物質の線形応答を量子力学的に調べるため、時間
依存密度汎関数法(TDDFT)も整備しています。


密度汎関数 分子動力学コードの開発 (2001年7月)


第一原理分子動力学法による物質研究 (2004年3月)


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