炭素の鎖を骨格とする高分子は、大きな分子量をもつ分子であり、工業製品の 中核であるばかりか、DNAやたんぱく質など生命を構成する素材、構造材です。 ここでは、電気を帯びた原子を含む荷電高分子の、クーロン(静電気)力に よる相変化、構造化について紹介します。これは、たんぱく質やDNAに起きる 折り畳み現象のモデルともいえます。 電気を帯びた高分子は「電解質高分子」 または「荷電高分子」と呼ばれ、大別して同じ 符号の電荷だけをもつ単極性高分子(Poly- electrolyte)と正負両方の電荷をもつ原子団 を含む両極性高分子(Polyampholyte)に分け られます。これは単純な分類ですが、性質の 違いをよく表しており、また実際に出会う帯電 した高分子の多くはこのどちらかです。例え ば、遺伝情報を伝えるDNAは(-e)を核_の ユニット(AGCT)ごとにもつ単極性電解質 高分子です。 ここでは、クーロン(静電気)力が熱運動より卓越した、クーロン強結合状態 を扱いますが、この状態は室温の水の中で実現されています。単極性高分子は 同じ符号の電荷どうしが反発しあうので、鎖を折りたたもうとするボンドの力に 抗して、長く伸びた状態が自然状態です。他方、両極性高分子は自身のなかに 正負の電荷を含むので、クーロン引力により構造化する傾向をもちますが、これを 上手に利用するため、温度、塩濃度やpHなどの環境をかえて、熱運動に対する クーロン力の大きさを変化させることで、両極性高分子の硬さ(やわらかさ)を 制御することができます。単極性高分子でも同様な制御ができます。生物はこの ような硬軟の性質を最大限利用して、室温で効率よく形態の制御をしていると 考えられます。 (右上図: 上下段はそれぞれ、クーロン結晶とアモルファス状態を表している) 前のページへ 次のページへ ホームにもどる |